ロベルトの半生~嘘つき小僧がバカ正直な大人になるまで~1
今まで自分がついた嘘の中で最も古いのって何か覚えてる?
嘘をついた事なんて無いよ!って言う人には意味の無い質問ですね。
尤もそんな人がいるなんて思ってないけども。
私のように嘘をついてきた人間からすればそんな自己申告なんて信じられないからね。
話を戻すとだね、
私は幼い頃から、それはもう幼~い頃から嘘をついていたのですよ。
はっきりとした年齢は覚えてないけど確か小学校に上がる前だったと思う。
自分が覚えてる範囲で最も古い嘘。
それは
「ごちそうさまでした」
言葉だけじゃ意味がわからないよね。
これは、家族でご飯を食べていた時についた嘘だ。
食べる時は「いただきます」、食べ終わったら「ごちそうさま」
普通じゃないか、と思うでしょう。
ただこの時私は自分の茶碗に残った白飯を食べ切る前にお腹が一杯になってしまった。
どれぐらいの量が残っていたかは流石に覚えてないけど。
もうこれ以上入らない。食べられない。
でも食べ切らないとごちそうさま出来ない。
どうしよう。
飯の事には厳しい親父の元に生まれちゃったもんだから。
拙い思案を巡らせた結果、未就学児の脳内に決死の作戦が浮かんだ。
茶碗を一気に掻き込む、振りをする
そして米の残った茶碗を掻き込む時の角度のまま中身が家族に見えないように傾けておく。
そして「ごちそうさま!」と元気よく立ち上がって台所に向かう。
完璧だろ。完璧か?
完璧かどうかはともかくやっとひらがなを覚えたぐらいの子供にしては立派な作戦だったのではないかな。
幼い理性がそうしろと私の本能に言い聞かせ私は実行した。
そしてだ。
勢いよく立ち上がって台所に向かおうと振り返った私の抱える茶碗に遠心力がかかってしまい勢い良くこぼれ落ちる米。
止まる空気。
怒る親父。
作戦は失敗に終わった。
結果私は大工仕事をしている親父の鍛え上げられた腕から放たれた強力なビンタによって人生初の反省を強いられる事となった。
多分これが初。
超痛え。
更に家の外に放り出されて親父の許しが出るまで気を付けの体勢で直立不動でより重い反省をする。
そして私の事を忘れて親父が寝静まった頃にお母ちゃんが私を家に入れてくれる。
これが私の恐らく初めてついた嘘の顛末である。という所で。
これが私の性格を作り上げた切っ掛けになる出来事だったのではないかなと思うのです。
いやな事から逃げる為に嘘をつく。
失敗したらその場で反省をさせられる。
でもね。
こんな目にあっても嘘をつくのは止められないのですよ。
お母ちゃんみたいに後から助けてくれる人がいたりするし。
最初から怒られるぐらいならなんとかごまかしてやろうと思ったりもしちゃうし。
自分が痛い目に会うかも知れないその都度、
逃げたくなるから。
嘘がバレたらもっと怒られるとわかっていても。
それでひょっとしたら上手く逃げられるかも、と思って私は嘘をつく。
これが私の幼少期。
こんな子可愛くもなんとも無いね。
自分の子供がこんな嘘つきになった時どう思う?
愛せますか?
許せますか?
私の父はどうだったか。
でも、母は許してくれましたし愛してくれました。
そんな母の話はまた次回、ゆっくり聞いてもらいましょう。
いや、読んでもらいましょうか。