ロベルトの半生~嘘つき小僧がバカ正直な大人になるまで~4
あれは小学校の頃、高学年になったぐらいでしたね。
私ことロベルト少年は学校で取り返しのつかない嘘をついてしまったんですよ。
普段から嘘ばかりついていたロベルト少年はクラスの中でも浮いた存在です。
そんなロベルト君に対して同級生達は机を離したり無視したり明らかに嫌っている風でした。
それでも中にはね、遊ぼうと声をかけたらいいよと言ってくれる優しい同級生もいたんです。
まあそんな優しい同級生達にも私ったら自分勝手な事ばっかりしてずっと迷惑をかけてきてたんですよ。
今思えばなんですが、ロベルト君はきっと普通の子達とちょっと違う思考と行動をしちゃう子だったんでしょうね。
嫌な事から逃げる為に口で嘘つき、口を出せなければ文字通りその場から逃げてしまう。
退屈な授業が嫌になったら途中で教室から走って出て行っちゃうんですよ。
行き先は保健室か図書室が多かったかな。
後は物置になってる教室とか、古い農工具を飾ってる教室なんかもあって。
皆が真面目に授業を受けてる時に私は一人であちらへこちらへと良くウロウロしていました。
ただこんな生徒は学校としてはもちろん放っておけませんからね。
私が逃げ出す度に担任からロベルトを探して連れ戻してきてくれとの命を受けた同級生がいつも二人組で授業中に探しに行かされるようになったのです。
ロベルト探索に派遣されるのは大体いつも私と仲良くしてくれた生徒でした。
ほぼ毎日授業から逃げ出していたので日毎に別の生徒が探しに来る事もあったけど。
優しい同級生は他のクラスメイトにも気を遣って率先して探しに出ていたんだろうなきっと。
そしてこのかくれんぼ、何故かすぐ見つかっちゃうんですよ。
行動パターン読まれてたのかな。
そんで見つかってしまったロベルト君は素直に連れていかれようとせず、ジタバタとめっちゃ抵抗します。
それはもう床に寝転んでダダをこねる子供のようでした。
そして必死の抵抗もむなしく、力ずくで立たされた私は二人がかりで手を掴まれて教室まで連行されます。
これがほぼ毎日。
迷惑な子ですね本当。
因みにこの逃走癖、一年生の頃からずっと続いてました。
こんな馬鹿な事を数年も続けていればいくら優しい同級生といえどもその優しさには限界があります。
その日も相変わらずすぐに見つかってしまった私は床に寝そべり連れていかれまいと抵抗していました。
高学年になっても全く成長せず迷惑をかけ続ける私に対しとうとう堪忍袋の尾が切れたのか、同級生二人は私の足を掴んでそのまま引きずって教室へ歩き出しました。
流石にこれは恥ずかしかったのか更に暴れて逃げようとする私の事等全く意に介さず同級生は教室へとたどり着きました。
そのままの体勢で教室内へと引きずり込まれた私を見てクラスメイト達は大爆笑。
教室中が笑いの渦に巻き込まれます。
羞恥に耐えかねて皆から顔をそらす私を担任が立たせ、「友達に迷惑をかけた事を謝りなさい」的な事を言ったんだと思うんですがそこで
「友達なんていらない!」
と私は大声で叫びました。
その一叫によって一瞬で静まる教室。
唖然とした担任に席に着きなさいと静かに叱られやっと授業が再開されました。
その日の放課後、私は自分の発言等全く気にせずいつものように同級生に声をかけました。
しかし返事はやってこない。
もう一度声をかける。
やっと返ってきた言葉は
「友達なんていらないんでしょ?話しかけないで」
この言葉を聞いて私は心臓が止まる思いがしました。
とんでもない事を言ってしまった。
でもそれ嘘です。
恥ずかしさに耐えられなくてとっさに思い浮かんだ事を言っただけなんです。
なんて言ってももう誰も信じてはくれないでしょう。
何せ常日頃から嘘ばかりついているんですからあれは嘘と言っても更にそれが嘘と思われてしまう。
こうして私は自分の嘘によってとうとうクラスメイトに一人も味方はいなくなってしまいました。
自業自得です。
誰がどう見ても私が悪い。
事実約二十年たった今でも、連絡を取り合う当時の同級生は一人もいません。
しょうもない嘘ならまだ嫌われながらも皆呆れるだけで済んでいたのに。
嘘が大きくなればなる程自分に返ってくる罰も大きいものになるんです。
取り返しのつかない事をしてしまったと反省をしたつもりのロベルト君。
でもね。
それでも、まだ嘘をつく癖は無くなっていませんでした。
まだロベルト少年の嘘つ記は続いてしまうのです。
今回は笑い所がないですねえ!
ではまた。